「このストーリーは何ポイントで見積もりますか?」— 標準的なCRUDフィーチャーなら簡単な質問です。しかしAIフィーチャーの場合、答えはたいてい「場合による」であり、それはステークホルダーが聞きたい答えではありません。
1. なぜAIストーリーは見積もりが難しいのか?
AI作業には、通常のフィーチャーにはない3つの不確実性の源があります:
| 不確実性の源 | 例 | 影響 |
|---|---|---|
| データの準備状況 | データパイプラインがまだ準備できていない | ストーリー全体をブロック |
| モデルのパフォーマンス | 精度が閾値を達成するか? | 追加の反復が必要 |
| 実験の分岐 | アプローチAが失敗し、アプローチBでやり直しが必要 | スプリントスコープが変わる |
2. AIプロジェクトにおけるストーリーの種類
正しく見積もるために3種類のストーリーを区別してください:
タイプ1:標準的な実装ストーリー
フィーチャーが明確で、AIの役割が設計済み:
「エージェントとして、レビューUIでAIの提案を確認したい
[UIは設計済み、API仕様が利用可能]」
→ Planning Pokerで通常通り見積もる
タイプ2:スパイクストーリー(調査ストーリー)
アプローチが不明で、事前に調査が必要:
「スパイク:顧客クエリ分類用に3つの埋め込みモデルを評価する。
タイムボックス:2日。出力:推奨ドキュメント。」
→ ストーリーポイントを見積もらない — 固定タイムボックス
→ スパイクの出力 = 実装ストーリーを見積もるためのインプット
タイプ3:実験ストーリー
実験を実行する必要があり、結果が不確実:
「実験:チケット分類にGPT-4o-miniとClaude Haikuをテストする。
成功基準:どちらかのモデルが87%の精度を達成すること。
タイムボックス:3日。どちらも合格しない場合 → チームにエスカレート。」
→ タイムボックス+成功基準、ストーリーポイントではない
3. AIストーリーに適応したPlanning Poker
3.1 見積もりに「不確実性の次元」を追加する
従来のPlanning Poker:1つの数値(工数)
AI適応型:2つの数値(工数 × 確信度)
見積もり形式:[ポイント] / [確信度:H/M/L]
例:
- Dev 1:「8 / M」— 8ポイントだが中程度の確信度
- Dev 2:「13 / L」— 13ポイントで低確信度(多くの未知要素)
- BA:「5 / H」— 5ポイント、高確信度(要件が明確)
大きな乖離がある場合 → 再見積もりの前に不確実性の源について議論する。
3.2 不確実性の内訳ディスカッション
確信度が低い場合、チームに質問する:
1. 「このストーリーのどの部分が不明確ですか?」
2. 「見積もりができるようになるために、何の未知要素を解決する必要がありますか?」
3. 「スパイクが必要ですか、それともバッファを持って見積もれますか?」
4. 3点見積もり(PERT)
不確実性が高いがスパイクを避けたい場合、3点見積もりを使用する:
O = 楽観的(すべてがうまくいく場合)
M = 最頻値(通常の条件)
P = 悲観的(問題が発生した場合)
E(期待値)= (O + 4M + P) / 6
例:AIモデル統合ストーリー
O = 3日(APIがドキュメント通りに動作)
M = 5日(デバッグ1ラウンド)
P = 10日(APIにバグがあり、回避策が必要)
E = (3 + 4×5 + 10) / 6 = (3 + 20 + 10) / 6 = 5.5日
ステークホルダーへの報告:「期待値5〜6日、APIの安定性によって3〜10日の範囲」
5. ステークホルダーへの不確実性の伝え方
原則:特定の点ではなく、範囲にコミットする
避けるべき:
「このフィーチャーはスプリント3で完成します」(根拠なし)
代わりに言うべき:
「このフィーチャーには3つの部分があります:
1. UI実装:高確信度、スプリント3 ✅
2. API統合:中程度の確信度、スプリント3〜4
3. モデル精度の検証:低確信度 — スプリント3でスパイクが必要、
スパイク後に再見積もり」
不確実性コミュニケーションテンプレート
## フィーチャー見積もり:[フィーチャー名]
### 確信スコープ(コミット)
- [コンポーネント1]:Xポイント — 要件が明確 ✅
- [コンポーネント2]:Yポイント — 実績のある技術 ✅
### 不確実スコープ(目安)
- [コンポーネント3]:〜Zポイント — データ検証待ち
- [コンポーネント4]:先にスパイクが必要(タイムボックス2日)
### 依存関係 / ブロッカー
- [ ] [チーム]からのデータパイプラインが[日付]までに必要
- [ ] [ステークホルダー]がモデル閾値を確認
### 推奨アプローチ
スプリントN:スパイク+確信スコープ
スプリントN+1:不確実スコープ(スパイク後に見積もり)
6. AIストーリーのDefinition of Ready
ストーリーが見積もり可能な状態とは:
- データ依存関係が特定され、利用可能性が確認済み(またはスパイク計画済み)
- AI/モデルのアプローチが確認済み(またはアプローチのスパイク計画済み)
- ステークホルダーと受け入れ閾値が合意済み
- フォールバック動作が定義済み
まとめ
見積もりの精度は見積もりの誠実さほど重要ではありません。AI見積もりにおけるBAの役割は、不確実性を体系化し、必要な場合はスパイクを提案し、ステークホルダーに現実的な期待値を設定することです — 根拠のない正確な数値を無理やり出すことではありません。
AIチームのスプリントベロシティは、スパイク作業のために従来のフィーチャーチームより20〜30%低くなる傾向があります。最初からキャパシティプランニングに組み込んでください。
